オール

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山田悠介はわりと好きで、一時期ハマって買い漁っていた。色々叩かれることも多いみたいだけど、その奇抜なシチュエーション設定というのはなかなかないし、何よりとても読みやすい。いい意味でインスタント的で。この作品はでも、今までのとはちょっと変わって突然の奇抜なシチュ、という形態ではなく、言うなれば群像劇。ほぼニートと化していたやる気のない青年がひょんなことから「なんでも屋」に入ることになり・・というものなんだけど、キャラクターも面白いし何より若者の心情がリアルというか身につまされるかんじで作者さんの若い感覚はとてもいいとおもう。  私は群像劇が大好きだ。この作品もそれなりに楽しく読めた。けれども、正直物足りない。群像劇の何が好きって、「私もこの中に入りたい!><」と思わされるような魅力に溢れたキャラクターや世界なのだが、それがちょっとパンチに欠けるんだよなあ。読み終わった後にくるぞくぞくぞく・・!と震えるかんじとか、しみじみ目を閉じて反芻してみる時間とかが、これには特になかった。決して悪い意味じゃないけど「いい暇つぶしをさせていただきました、ありがとう。」というかんじかな。
山田悠介のボロが見えてしまったのかもしれない。この方本当は小説を書くのが巧いわけじゃないんだなあと気づかされてしまった気がして。表現がね。やっぱり他の巧い方に比べるとね。奇抜な設定と、そこでの追い詰められた人間模様、というものに頼りすぎだったのかなあ。そういうのは好きだし味だと思うからそれはそれで凄いことだと思うんだけど。楽しかったし。次どうなるんだろう?ぞくぞく!というのはすんごくあるんだよね。  群像書くならもうちょっとがんばってー!という感想。  以下の本は結構おもしろくてハマった。漫画のよーにさくさく読めて良い。
リアル鬼ごっこ (幻冬舎文庫)Aコース (幻冬舎文庫)Fコース (幻冬舎文庫)ライヴ@ベイビーメール (角川ホラー文庫)